慣れ親しんだ田園風景が住宅街になって、24歳の若者が感じること




僕はいつもと変わらない田園風景を見ながら学校に向かっていた。

晴天の日も、曇りの日も、雨の日も、背丈ほどの雪が積もった日も、僕はその風景を見ながら学校へ向かった。

 

高校に上がり、通学路が変わってからは、その景色を見ることは少なくなった。

でも、たまに通りかかった時に見たその景色は、やはり僕を9年間見守ってくれた変わらぬ景色だった。

 

この景色がいつまでも続くのだろう。

そう思っていた。

 

どこまでも続くようなこの田園風景がなくなるなんて、ちっぽけな僕には想像できなかったのだ。

 

「宅地化反対」の文字

あれは確か小学校高学年の頃だった。

いつもと変わらない田園風景を眺めながら、学校に向かっているとある文字が僕の目に飛び込んできた。

 

宅地化反対

 

赤く、太く、大きい字で倉庫の壁面にそう書かれていた。

ちっぽけな僕には意味がわからなかった。

おそらく、この田んぼが宅地化されることに反対してのことだったのだろう。

それくらいはわかったのだけど、こんな広大な田園が、まさか宅地化されるなんて僕には想像できなかった。

 

その文字を見かけてから、しばらく何も起こらなかった。

稲が植えられ、成長し、黄金色に色付き、収穫されていく。

田んぼの周りでは、いつも多くの生き物が力強く、弱肉強食の世界を生き抜いていた。

そんな見慣れた1年のルーティンが毎年変わらず繰り返されていた。

 

「あの文字は何を訴えているんだろう。宅地化される気配なんてないじゃないか。」

 

そんな思いを抱きながら、この毎年変わらぬルーティンが途切れる日が来るなんて思いもしなかった。

 

「あそこの田んぼ、住宅街になるんだって」

大学生になって最初の年だった。

実家に帰省すると、母親がこんなことを口にした。

 

「あそこの田んぼ、住宅街になるんだって」

 

その時、僕は忘れていたあの文字を思い出した。

宅地化反対

当時は意味のわからなかった、その文字が意味することが、現実になろうとしていた。

おそらく僕たちの耳に入る前に、そこに住んでいる人たちは、行政と戦っていたのだろう。

僕たちの耳にも入ってきたということは、その人たちは敗北したことになる。

 

自分たちの家を守ろうとしたのか。

どこまでも続く田園風景を守ろうとしたのか。

僕にはその真意はわからないけれど、なんだかやり切れない気持ちになった。

 

そして、気づくと僕はその景色の前にいた。

ただ純粋に「もう一度見たい」

その気持ちだけだった。

9年間、僕を見守り続けてくれた。

この風景がなくなる。

 

ふと気づくと、僕の頬を温かいものが伝っていた。

僕は心の中で感謝を告げながら、いつまでもボーッと眺めていた。

 

田園風景がなくなるということ

それからは、毎年、田園風景は潰されていった。

田んぼが埋め立てられ、地盤が整備され、道路ができた。

家やスーパー、ドラッグストア、カフェなどが続々とできた。

そして、完成した景色は、どこにでもある普通の景色になっていた。

姿を変えてしまった風景は、地域の発展を意味するのだろうか。

 

1つの田園がなくなったくらいで、新潟からコメ産業が淘汰されるわけじゃない。

そこに住む人が増え、建設業が盛り上がり、そこで消費が起きれば、地域は活性化されるだろう。

 

でも、少し現実に目を向ければ、人口の減るこの地域で新しい住宅街を建設することの無意味さがわかるのではないだろうか。

 

確かに、田舎では未だに「マイホーム」への憧れが捨て切れていない人が多い。

家族を作り、新築で家を持ち、良い車に乗る…そういう人生が「定型化」されている。

そういう人生を否定するわけでもないし、その生き方を信じているならそうすれば良い。

でも、そうすると田舎はどんどん衰退していくだろう。

きっと、数年後には、「空き家をなんとかしろ!」と騒いでいる未来は容易にわかる。

 

その住宅地を作るのにも、多大な税金が投入された。

多くの人がそこに集まるけれど、それはほとんど地元の「中の人」がそこに移動しただけではないだろうか。

そのお金を使って、外の人を呼び込むための政策、子供を作りやすくする政策をすれば、どんなに有効だったかと想像すると、本当に情けない。

どうせ、住宅なんて余っているんだから、既存のリソースをうまく活用してしまえば良いんじゃないだろうか。

 

 

 

思い出の田園景色に思いを馳せながら、24歳の僕は、そんなことを考えた。

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こばりょー
睡眠デザイナー / ブロガー / エンジニアの複業家(25歳)。 当ブログ″Koba Lab″を運営。「人生は実験だ!」をモットーにいろいろ実験していきます。 睡眠の知識 / 若者の働き方・生き方について発信していきます。 めちゃくちゃめんどくさがり屋やで。








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