
僕は、大学4年間一人暮らしをしていた。
その4年間、ほとんど丸々同棲している子がいた。
その子の名前を仮にカオリとしておく。
今日は、そんなカオリとの出会いから別れまでの不思議な話を告白しようと思う。
①カオリとの出会い
僕は、後期試験で通っていた大学に受かった。
当時、国公立に行くつもりだったから、私立大学の合格は0。
その後期試験に落ちたら、浪人という選択肢かなかった僕は、合格した瞬間、全身から一気に力が抜けるような気持ちだったのは鮮明に覚えている。
そんな崖っぷちだったため、入学手続きを慌ただしく終わらせ、同じくバタバタと一人暮らしをするためのアパートの契約、新生活の準備を進めた。
「新生活の準備ってこんなに大変なのか…」
そんなことを思いながらも、着々と準備は進んでいく。
ようやく新しいアパートの部屋に家具が持ち込まれ、その片付けが終わって、一息ついていた時、カオリは急に僕の目の前に現れた。
僕はただただ驚いた。
引っ越したばかりのこの部屋に、なぜいるんだろう。
どこから来たんだろう。
今までどこにいたんだろう。
「君は一体誰なんだい?どうしてここにいるの?」
そう問いかけると、カオリはすぐにいなくなった。
いつの間にかいなくなっていた。
ほとんど状況が掴めなかったが、これがカオリとの出会いである。
この時のカオリは、確か小さくてかわいい子で、少し慌ただしい雰囲気の子だった。
②カオリを思う日々
それから、僕は大学で友達ができて、部活も勉強もバイトもそこそこ打ち込んで、楽しく大学生活を過ごしていた。
将来に漠然とした不安を抱えていたものの、何ら不満もなく大学生活を満喫していた。
でも、ずっと頭の片隅に引っかかっていたものがあった。
そう、カオリのことである。
僕がこの部屋に住み始めて、最初に顔を合わせてから、一度も姿を現してくれなかった。
この部屋のどこかにいるはずなのに、お互いのことは全然知らない。
もしかしたら、向こうは僕のことを見ていて、いろんなことを知っていたのかもしれない。
でも、僕はカオリのことを何も知らなかった。
そんなモヤモヤした気持ちもいつしか時が忘れさせてくれていた。
いつしか、僕はカオリのことを気にしなくなっていた。
「僕の見間違いだったのかもしれない。きっと、慌ただしい新生活の準備で疲れていたんだ。」
そうしてカオリのことをすっかり忘れていた。
僕は大学4年生になっていた。
③カオリとの再開
新潟の身を刺すような冷たい風が吹く寒い冬。
僕は、大学の単位も取り終えて、翌年度から働く会社の内定も決まって、順調に大学を卒業しようとしていた。
「あとは残りの時間を有意義に使って、卒業するだけだなぁ。」
そんな風にのん気に思っていた。
その日、僕は大学の気の合う友人との楽しい飲み会を終え、いつものアパートに帰宅していた。
相変わらず身を刺すような冷たい風が吹いていた。
「うー、寒い。シャワーでも浴びて温まろう。」
そう独り言を呟いて、僕はシャワーを浴びた。
冷え切った体を温めてくれるシャワーがものすごく気持ちいい。
体を拭いて、いつものスウェットに着替える。
ドライヤーで髪を乾かして、ようやく一息ついてソファに腰をかける。
その時、後ろに何かいた気がした。
その瞬間、すっかり忘れいてたカオリのことを思い出した。
僕は恐る恐る振り返ってみた。
そこには、確かにあの時出会ったカオリがいた。
少し大きくなっていたが、慌ただしい雰囲気は相変わらずだ。
僕は何かに取り憑かれたように無言でカオリを捕まえようとした。
「あの時みたいに逃してたまるか」
そう思いながら、4年間カオリのことを忘れいていた自分を恐ろしくも感じた。
しかし、カオリを捕まえようとソファから腰を上げた僕をあざ笑うかのように、カオリはまたしても忽然と姿を消した。
これが、2回目にカオリと会った時の話である。
④カオリとの3回目の再開
それから、僕はカオリのことが頭から離れなくなった。
「カオリは、ずっと僕の部屋にいたのかもしれない」
「どうしてこのタイミングでもう一度姿を現してくれたんだろう」
「一体、何者なんだろう」
いろいろなことが頭の中を渦巻いていた。
しかし、カオリとの3回目の再開はすぐにやってきた。
翌日、いつも通り帰宅すると、そこにカオリはいた。
カオリのことを何も知らない僕は、その存在に恐怖すら覚えていた。
恐ろしくなって、少し距離を取ってみる。
「何か行動を起こさなければ」
そう思って、カオリから一瞬目を離した。
しかし、もう一度、カオリに視線を戻すと、カオリはまたしてもいなくなっていた。
僕はただただ恐ろしくなった。
⑤カオリとの別れは突然に
カオリと3回目の出会いの翌日、いつも通りアパートに帰宅した。
すると、3回目との出会いとは別の場所にカオリはいた。
僕はカオリから目を離さないようにしながら、何かしなければと思い、近くにあったスプレータイプの洗剤に手をかけた。
何か起きるかもしれないと思い、カオリに向かって、それを噴きかけた。
もしかしたら、カオリに何かすれば、姿を消さないかもしれないと思ったんだと今考えれば思う。
洗剤は、カオリに命中した。
いつも通り、姿を消すかと思った。
しかし、カオリは姿を消すことなく、その場でもがき苦しんでいた。
「どうしてこんなことするの?」
そんなことを言いたげな瞳が僕を見つめ、いつしかカオリは動かなくなっていた。
もしかしたら、カオリは僕にお礼を言いにきていたのかもしれない。
「4年間住まわせてくれてありがとう」
2月には引っ越してしまう雰囲気を感じて、その言葉を言うために僕の前に4年ぶりに姿を現してくれたのかもしれない。
動かなくなったカオリを前に僕は思った。
カオリの正体とは…?
どうも、こばりょー(@kobaryo_KobaLab)です。
ここまで読んでくださって方、ありがとうございます。
僕が大学4年間で同棲して、4回しか顔を合わせることのなかった子についての話を今回書いてみました。
さて、みなさんはカオリの正体がわかったでしょうか?
人間?
彼女?
幽霊?
いろんな予想をしながら読み進めていただけたかと思います。
少しでも、ワクワクしながらこの話を読んでくださったなら、嬉しい限りです(笑)
実は、カオリの正体は彼女でも幽霊でもなく、ムカデだったんです。
僕が大学に入学して、引っ越したばかりの頃に、本当に小さくてかわいいサイズのムカデが現れました。
その時は逃してしまったんですが、それから4年生の冬まで一度も出てこなかったんですね。
たぶん、部屋のどこかにいたはずなんですけど…(笑)
4年生になった頃には、かなりサイズが大きくなっていて、対峙するだけで恐怖を覚えるほどでした…(笑)
そいつも、4回目に出てきた時、台所だったので、近くにあった塩素系の洗剤をかけたところ退治できました。
僕の愛用しているキッチン泡ハイターです(笑)
最近、帰宅途中に道でムカデを見かけて、このことを思い出したので記事にしてみました。
少しでも楽しんでいただけたなら、嬉しい限りです(笑)
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