
僕は2年前、生まれ育った新潟から上京してきた。
大学の頃から1人暮らしをしていたから、別に寂しくなんてなかった。
慣れない仕事が始まることへの不安はあった。
でも、僕ならなんとなると思っていた。
それよりも、わくわくしていた。
これからどんな人会うのか。
自分がどうなっていくのか。
どんな仕事をするのか。
そんなことばかり考えていた。
僕が引っ越した最寄り駅の前にある八百屋さん

僕が引っ越したマンションの最寄り駅。
その前に、小さな八百屋さんがあった。
「東京にもこんな八百屋さんがあるんだ」
そんなことを思いながら、お店に入ると、どこか懐かしい気がした。
そこは、僕がまだ小学校に上がる前、母親と通っていた八百屋と匂いが似ていた。
僕が今でも大好きなトマト。
そういえば、その八百屋で買い物ついでにもらっていたトマトがめちゃくちゃ美味しくて好きになったんだったなぁ。
僕にいつもトマトをくれたおばちゃんは元気だろうか。
ふと、そんなことを思った。
そんな懐かしさを感じるその八百屋さんに、僕は通うようになった。
「背高いんだねぇ」

いつもの仕事帰り、大好きなトマトと朝ごはんで食べるバナナを持ってレジに向かった。
「背高いんだねぇ」
僕が財布の中の小銭取り出そうとしていると、そんな声が聞こえてきた。
温かく包まれるような優しい声だった。
顔を上げると、しわくちゃの顔に満面の笑みのおばちゃんがいた。
「そ、そうなんですよ〜」
僕はぎこちない返事しかできなかったけど、おばちゃんは満面の笑みのままだった。
「いつもありがとねぇ。また来てね」
どうやら僕のことを背が高くて覚えてくれていたようだった。
なんでもない会話だけど、なんだか僕は温かい気持ちになった。
まるでおばあちゃんのような八百屋のおばちゃん

それからというもの、買い物に行くたびに会話をするようになった。
「仕事はどう?」
「ご飯ちゃんと食べてる?」
「彼女はできた?」
そんな母親やおばあちゃんに聞かれるようなことを聞かれるようになった。
僕を孫のように思っているのか、身近な心配ばかりしてくれた。
僕はなんだか嬉しくなった。
ある日、サービスで僕の大好きなトマトをくれた。
家に帰って食べてみると、子供の頃にもらったあのトマトと同じくらい美味しかった。
どんなに辛くてもー
どんなに疲れていてもー
どんなに悲しくてもー
頑張れる気がした。
しわくちゃな満面の笑みでこんなことも言われた。
「彼女ができたら連れてくるんだよ〜」
おばあちゃん
彼女ができたら、紹介するね。
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